人工血管の静的静脈圧の測定は必要なの?

臨床工学技士業務関連

シャント管理にはいろいろあります。

血管の虚脱の確認、シャント音、スリル、静脈圧、脱血状態、エコー etc.

その中でも、

人工血管の管理に静的静脈圧の測定があります。

これはガイドラインにも明記されていますね。

静的静脈圧とは

ループ状の人工血管を使っているシャントの管理方法の一つになります。

日本透析医学会から出ている『慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン』(PDFになります)

にはこのように明記されています。

透析を開始して回路内が血液に置き換わった時点で血液ポンプを停止する.

その際に静脈チャンバーとダイアライザーの間をクランプする.

クランプ30 秒後に安定した静脈圧を静的静脈圧として記録
引用:慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン

これですね。

この中には明記されていませんが、方法としては、

・毎回の測定方法が同じ

・静脈チャンバーと患者さんの高さを同じにする

ということが基本になるみたいです。

 

毎回の測定方法が同じというのは当たり前なのですが、

『静脈チャンバーと患者さんの高さを同じにする』

という点がなかなかリスクが高いと判断しました。

もちろん、初めは同じ高さにしていたのですが・・・

静脈チャンバーと患者さんの高さを同じにするリスク

透析室を見ると、

患者さんはベッドに横になって、その横にコンソールがあると思います。

静脈チャンバーは自然と患者さんよりも高い位置になります。

 

蒸着チャンバーを患者さんと同じ高さにするということは、

一度、固定しているポールから回路を外したり、ダイアライザーのフォルダーを外したりして、

患者さんの寝ているベットと同じ高さにする必要があります。

 

これ、危険です(>_<)

・回路を引っ張り、接続が外れる恐れがある。

・チャンバーが脱落し、チャンバー内の空気が患者さん側に流入する

・回路の折れ曲がり

・抜針のリスク

ざっと上げてもこれだけあります。

 

このリスクをわざわざ犯してまで、透析毎に測定する必要があるのか?

という問題があるのですが・・・

Dr.曰く

「関連施設では測定しているから」

と。

 

静的静脈圧の測定を簡易化するために

始めは静的静脈圧の測定をガイドラインと同じよう様に測定していました

2,3ヶ月くらいでしょうか?

測定しました。

そして、そのデータをグラフに。

 

それと同時に、

ダイアライザーホルダーを固定ポールに固定したままの状態でも測定

そして、

その2つを比較

 

結果・・・

同じような動きになりました(・∀・)b

ということで、

これおもとに、今後は高さを合わせずに静的静脈圧の測定をしよう!!

ということをもくろみました( ̄▽ ̄)

 

で、実際に行った結果・・・

予想通りの展開になりました( ̄▽ ̄)

 

とは言うものの、当たり前なんですけどね(;・∀・)

圧力の関係を理解していれば、

高さが上がればその分だけ、圧が低くなるのは当たり前。

でも、相関が取れていないと、提案もできません。

なので、実際に測定。

 

静的静脈圧の測定の意味

静的静脈圧の測定の意味は

『初めからどれくらい圧力が上昇したか?』

ということを見るのがポイントになります。

 

ガイドライン上では50mmHg以上の上昇は問題と書かれています。

 

つまり、

最初と測定時の静脈の差がわかればそれでいいということですよね(・∀・)b

ということで、高さを決めてそこが基準圧とすれば、

それからどれくらい上昇したのか?を見れば問題ないということですね(・∀・)b

 

それ以前に、単なる静脈圧ではダメなのか?

という問題がありますが・・・

静的静脈圧と静脈圧は違うのか?

ガイドラインでは

『動的静脈圧は穿刺針のゲージ、回路の形状および血流量に大きな影響を受ける』

『静的な静脈圧を測定することを推奨』

と、書かれています。

条件を同じにしないと、測定圧の信頼性がないのはもちろんですね。

 

とはいえ、

結論、観察したいのは静脈圧が上昇しているのか?

になります。

静脈側の狭窄による圧の上昇を観察したいということですね。

これは、前回と今回が測定条件によって変わってくると困るのか?という話

針の位置が変わって圧力が違ってくるのはわかります。

が、前回と今回で圧力差が出ていても、全体で見たらそれほど変わらない。

ということなら、問題ない・・・と思うのですが・・・

 

実際、高さを合わせた静的静脈圧、ダイアライザーホルダーを固定したままの静的静脈圧、そして、透析中の静脈圧。

これらを比較した場合、圧力は違えど、経時的な推移はほとんど同じでした(^^;)

これをみたら、透析中の静脈圧を指標にしたらそれでいいのでは?

リスクを取る必要はないのでは?

と思うのは私だけなのか?

ということで、Dr.に提案しようと思ったのですが、

ビビりの私は残念ながら、ホルダー位置を固定したまま測定の提案だけで妥協しました(^^;)

まとめ

ループ状の人工血管では静的静脈圧の測定が推奨されています。

ただ、

個人的な意見では、透析中の静脈圧のモニタリングだけで問題ないと思います

ということですね(・∀・)b

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