長年、透析をされていると、
手の親指から中指にかけてしびれてくる症状が見れる方がいます
いわゆる、
『手根管症候群』
ですね
ここでは、透析患者さんの手根管症候群に関してまとめておこうと思います。
手根管症候群の概要
原因:蓄積したアミロイドが線維化し正中神経を圧迫することによって起きる
症状:親指~薬指半分(親指側)がしびれる
検査・診断:ティネイル様サイン、ファレンテスト、神経伝道検査、画像診断
治療:保存治療、手術
こんな感じですね。
詳しく見ていきたいと思います(・∀・)b
透析患者の手根管症候群 原因
透析患者にとって切っても切れないのが『アミロイドーシス』
β2ミクログロブリンが前駆体と言われています
本来は体内で分解除去されていく物質で、腎不全でない場合は問題になりませんが、
腎不全になると尿細管からの再吸収ができなくなり、分解されず、体内に蓄積されていきます。
このアミロイドが各所に蓄積・繊維化することにより障害が生じるのが透析アミロイドーシス
このアミロイドが手首にある横手靭帯に蓄積し、その中にある正中神経や指屈筋腱を圧迫することで痛みやしびれが出現してくるのが手根管症候群になります。
この透析アミロイドーシスは手根管症候群のほかにも、『ばね指』『肘部管症候群』『手背アミロイド症』『透析脊椎症』『肩関節症』etc.があります。
アミロイドが各所に蓄積し、症状が出ることで名前が変わってくるということですね。
透析患者の手根管症候群 症状
症状は圧迫されている正中神経が支配する領域に出現するみたいです
親指から薬指の親指側半分のしびれ
が主な症状で、
安静時に痛みがひどくなるのも特徴
明け方に手のしびれで目が覚めたり、透析後半にしびれが増悪したりします。
また、しびれや痛みは手を振ったり、指汚曲げ伸ばしすると痛みが楽になるのも特徴的です。一時的に圧迫が解除されるのでしょうね。
見た目では母指球筋の萎縮が見られ、
握力が低下し、ペットボトルの蓋を開けることができなくなってきます。
患者さんからの訴えで、手根管症候群の疑いがある場合は握力測定をするのも一つかもしれませんね(・∀・)b
また、ペットボトルを透析室に用意しておいて、それを開けてもらうのもいいかもしれません。ペットボトルの蓋は握力が大幅に低下していなければ開けれるようにできていますからね。
脊椎からくる手のしびれと判別する必要があるみたいですが、
手根管症候群と違って、脊椎の圧迫によるしびれは安静時には改善する傾向があるみたいです。
逆に、立位や座位のように脊椎が圧迫される体位で増悪するそうなので、それも差別化の一つになりそうです(・∀・)b
透析患者の手根管症候群 検査 診断
診断には『ティネイル様サイン』『ファレンテスト』『神経伝導検査』『画像診断』がありますが、
透析室ですぐにできる検査の『ティネイル様サイン』『ファレンテスト』に関してまとめます
また、その他に、OKサインを作ることができなくなるといった症状もあります
ティネイル様サイン
手のひら側の手首を打腱器等でたたくと、痛みやしびれが指先にひびくと手根管症候群の疑いがあります
ファレンテスト
両手の甲を合わせて、1分程度待ちます。その間、しびれや痛みが悪化するようなら手根管症候群の疑いがあります。
OKサインができない
母指球筋の低下により、親指と人差し指で作るOKサインが綺麗な丸にならず、
崩れた形になるのも特徴の一つ。
また、母指球の膨らみが痩せてきます。
透析アミロイドーシスの診断基準ガイドライン
2010年に『アミロイドーシス診療ガイドライン2010』というのが発表されていました
その中ではこのように透析アミロイドーシスの診断基準が書かれています
透析患者の手根管症候群 治療
治療は2つ
保存療法と手術
保存療法は初期段階で有効のようですね
手根管部に注射により薬剤を入れ、痛みやしびれを和らげる。
いわゆる、対処療法なのでいずれ症状は出てきます。
手術は手根管にある横手根靭帯を開放します。
これにより、正中神経の圧迫が解放され、症状が改善する見込みです。
現在は局所麻酔により内視鏡手術が可能なので、低侵襲で行うことが可能。
中には日帰り手術をしてくれるクリニックもありますね(・∀・)b
透析患者さんは透析をしなくてはならないので、入院すると大きなストレスになります
(親しみ慣れた、透析施設以外で透析をするのはストレスだと言っておられました(^^;))
なので、日帰り手術が可能なのはありがたい限りです・・・が、そのようなクリニックは少ないみたいです(>_<)
まとめ
透析患者の手根管症候群に関してまとめました。
透析歴10年以上の患者の手のしびれの大半は手根管症候群によるものというデータもあるそうな・・・
なので、
「透析を受けると手のしびれが・・・」
なんてことを訴える患者さんがいたら、一度診断をしてもいいかもしれません。
目視で確認可能な母指球筋の萎縮やOKサインができるかどうかをまずは確認するのもいいかもしれませんね。
高齢の患者さんでは母指球筋の萎縮は手根管症候群でなくてもありますが(;’∀’)
日ごろの患者さんの観察が重要になってきますね(・∀・)b
10年以上の患者さんには年1回のチェックを実施してもいいかもしれません
意外と、訴えてこないで痛みとしびれを我慢している患者さんもいます
特に、高齢の患者さんは幼少期に我慢を強いられることが多く、また、
日本の教育自体が我慢を推進していたので、とても我慢強いです(>_<)
そのような患者さんを早期に発見し、問題を解決することができるといいと思います(・∀・)b
関連記事⇒透析患者のばね指